この単元の位置づけ
次の単元(古代ギリシア)は、この単元の最後に登場するアケメネス朝ペルシアとの衝突から始まります。ペルシア戦争を理解するには、ペルシアが「どういう帝国だったか」をここで押さえておく必要があります。
大河のほとりに国家が生まれた
灌漑が余剰を生み、余剰が階級を生んだ
ティグリス・ユーフラテス川流域(メソポタミア)とナイル川流域(エジプト)では、灌漑農業によって食料の余剰が生まれました。余剰は、農業をしない人々——神官・戦士・職人——を養うことを可能にし、そこから身分の差と国家が生まれます。文字が発明されたのも、余剰を記録し分配を管理する必要からでした。
メソポタミアは、支配者が何度も入れ替わった
開放的な地形 = 侵入されやすい
シュメール人が都市国家(ウル・ウルク・ラガシュ)を築き、楔形文字を用いました。その後アッカド人のサルゴン1世が統一し、さらにバビロン第1王朝のハンムラビ王が再統一します。ハンムラビ法典は「目には目を」の復讐法で知られますが、刑罰が身分によって異なる点が重要です。周囲を山や砂漠に囲まれていないため、この地域は繰り返し外部から侵入されました。
エジプトは、長く同じ体制が続いた
閉鎖的な地形 = 守られやすい
砂漠と海に囲まれたエジプトでは、古王国・中王国・新王国と長期にわたって王朝が続きました。古王国ではピラミッドが築かれ、新王国ではアメンホテプ4世がアトンのみを崇拝する宗教改革を行います(結果的には彼の死後に元へ戻りました)。ヘロドトスの「エジプトはナイルのたまもの」という言葉は、この地形と王権の関係を一言で言い表しています。
東地中海の3民族が、次の時代の道具を残した
交易・文字・宗教
フェニキア人は地中海交易で栄え、表音文字を用いました。これがギリシア文字を経てアルファベットの起源になります。アラム人は内陸の中継交易を担い、アラム語は国際商業語になりました。ヘブライ人はバビロン捕囚などの苦難を経て、唯一神を信じるユダヤ教を成立させます。この3つ——交易網・表音文字・一神教——が後の世界を形作りました。
統一の方法が、帝国の寿命を決めた
ここが論述の頻出テーマ
アッシリアは前7世紀に初めてオリエント全域を統一しましたが、征服民を強制移住させるなど強圧的な支配を行い、短期間で崩壊して4王国に分立します。その後アケメネス朝ペルシアが再統一しました。ダレイオス1世はサトラップ(知事)を置き、「王の目」「王の耳」と呼ばれる監察官で監視しつつ、被支配民の宗教や慣習には寛容でした。同じ「統一」でも、支配の方法が正反対だったことが両者の寿命を分けます。
混同しやすいところ
正誤判定の誤り選択肢は、ここを狙って作られます。
バビロン第1王朝=ハンムラビ王の王朝。新バビロニア=アッシリア滅亡後の4王国のひとつで、ヘブライ人をバビロン捕囚した側。名前が似ているだけで時代がまったく違います。
どちらもオリエントを統一しましたが、アッシリアは強圧的で短命、アケメネス朝は寛容で長期。「統一した」という共通点だけで混ぜると論述で失点します。
楔形文字はメソポタミアで粘土板に刻まれた文字。フェニキア文字は表音文字で、ギリシア文字を経てアルファベットの起源になりました。「文字の起源」を問われたらフェニキアです。
どちらも交易民ですが、アラム人は内陸の中継交易、フェニキア人は地中海の海上交易。活動範囲がまったく違います。
早稲田・明治・青山学院ではこう問われる
この単元は文字・宗教・地図が重なる分野で、大学ごとに問われ方が分かれます。
この単元は、入試でこう問われる
出題形式ごとに例題を用意しました。答えを見る前に、まず自分で書いてみてください。
古代オリエントについて述べた文として誤っているものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。
- シュメール人はメソポタミア南部に都市国家を建設し、楔形文字を使用した。
- ハンムラビ法典には、被害者の身分にかかわらず同一の刑罰を科す原則が定められた。
- フェニキア人が用いた表音文字は、のちのアルファベットの起源となった。
- アケメネス朝はサトラップを各地に置き、監察官を派遣して統治した。
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なぜ誤りか。ハンムラビ法典は「目には目を」の復讐法で知られますが、刑罰は身分によって異なりました。同じ行為でも、被害者が貴族か平民か奴隷かで科される罰が変わります。「身分にかかわらず同一」という部分がひっくり返されています。
この設問の型。正しい知識に「例外を消す一語」を足して誤りを作る型です。「すべて」「かならず」「〜にかかわらず」といった語が出てきたら、そこを疑ってください。世界史の正誤問題で最も多い作り方のひとつです。
次の文中の空欄( A )〜( C )に入る最も適切な語句を答えよ。
前7世紀に初めてオリエント全域を統一した( A )は、征服した人々を強制的に移住させるなどの支配を行ったため各地の反発を招き、まもなく崩壊した。その後成立した( B )朝ペルシアでは、ダレイオス1世が全国を州に分け、( C )と呼ばれる知事を置いて統治した。
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この設問の型。空欄補充は一問一答に見えますが、実際には因果の順序を問うています。「強圧的支配 → 反発 → 崩壊 → 次の帝国は寛容な統治」という流れを持っていれば、Aが空欄でも文脈から特定できます。逆に語句だけ覚えていると、アッシリアとアケメネス朝を取り違えます。
上位校ではここが深くなる。「サトラップを監視するために置かれた役職は何か」(王の目・王の耳)、「主要都市を結んだ道路の名は何か」(王の道)まで問われます。制度はセットで覚えると取りこぼしが減ります。
アッシリアとアケメネス朝ペルシアは、ともにオリエント全域を支配した。両者の支配方法の違いと、それが帝国の存続に与えた影響について、120字程度で説明せよ。
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アッシリアは征服民の強制移住など強圧的な支配を行ったため各地の反発を招き、統一は短期間で崩れて4王国に分立した。一方アケメネス朝はサトラップを置いて監察官で監視しつつ、被支配民の宗教や慣習を尊重する寛容な統治を行ったため、広大な領域を長期にわたり維持できた。(124字)
採点者が探しているもの。この設問で加点されるのは「強圧的/寛容」という対比と、それぞれの結果(短命/長期存続)です。制度名(サトラップ)を挙げれば具体性の点が付きますが、制度名だけ並べて対比と結果がないと点になりません。
よくある失点。アッシリアの説明に字数を使いすぎて、アケメネス朝が一行で終わる答案が非常に多いです。比較の論述は字数を半分ずつ使うと決めてから書き始めてください。
古代文明の分布を示した地図を参照し、次の設問に答えよ。地図中には、①エーゲ海、②エジプト、③メソポタミア〜シリア、④インダス、⑤中国、⑥メソアメリカ、⑦ユカタン半島、⑧アンデスが示されているものとする。
設問1 地図中②で用いられた文字の解読に成功した人物名を記せ。
設問2 地図中③で成立した、身分によって刑罰が異なることで知られる法典の名を記せ。
設問3 全オリエントを最初に統一した国の名を記し、その中心が地図中の①〜⑧のどこにあたるかを答えよ。
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この設問の型。早稲田の文化構想学部などで用いられる地図を参照させる形式です。人名や用語を知っていても、それがどの地域の事項なのかが分からないと答えられません。選択肢がなく記述で問われる場合はなおさらです。
設問1の注意点。「解読に成功した人物」を問われています。②はエジプトなので神聖文字=シャンポリオン。①のエーゲ海ならヴェントリス(線文字B)、③のメソポタミアならローリンソン(楔形文字)です。解読者は地域とセットで三人まとめて覚えてください。なお、クノッソスを発掘したエヴァンズは文字を発見した人物であり、解読者ではありません。
設問3で差がつく。アッシリアという答えは出せても、地図上の位置を選べない受験生が多く出ます。白地図に古代文明の分布を書き込む作業を一度やっておくと、この形式では大きく有利になります。
早稲田では地図問題が毎年出ます。文字情報だけで覚えている状態は、この形式に対して無力です。
次の①〜④の出来事を、年代の古いものから順に並べ替えよ。
- ハンムラビ王が法典を発布した。
- アッシリアが全オリエントを統一した。
- アケメネス朝のダレイオス1世が最大の領域を実現した。
- シュメール人が都市国家を築いた。
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並べ方の筋道。統合の度合いで並びます。④シュメール人の都市国家はまだ分立している段階。①ハンムラビ王はメソポタミアを統一した段階。②アッシリアはオリエント全域を初めて統一し、③アケメネス朝はそれを寛容な統治で再統一しました。都市国家 → 地域統一 → 全域統一(強圧的)→ 全域統一(寛容)という拡大の順序に載せれば、年号がなくても並びます。
②と③の順序が要点。どちらも「オリエント統一」なので混同しやすい箇所です。アッシリアが先に統一し、強圧的支配で短命に終わったあと、4王国の分立を経てアケメネス朝が再統一した——この因果を持っていれば迷いません。単元01の中心テーマがそのまま整序問題になっています。
古代は「統合の度合い」で分類する。年号の間隔が大きく暗記しにくい時代ですが、どこまで広い範囲がまとまったかという軸で並べれば十分に処理できます。
次の文章を読み、設問1〜4に答えよ。目標時間は5分。
メソポタミアではシュメール人が都市国家を築き、①楔形文字を用いた。その後アッカド人が統一し、バビロン第1王朝の( A )王が法典を発布する。この法典は②復讐法の原則で知られる。
エジプトではナイルの恵みのもとで王朝が続き、新王国の( B )は唯一神を崇拝する宗教改革を行った。東地中海では、フェニキア人が用いた表音文字が③のちのアルファベットの起源となる。
やがてアッシリアが全オリエントを統一するが、強圧的な支配のため短命に終わった。再統一を果たした( C )朝ペルシアは、被支配民の宗教や慣習に寛容な統治を行った。
設問1 空欄( A )〜( C )に入る語句を記せ。
設問2 下線部①の解読に成功した人物を選べ。
ア シャンポリオン イ ローリンソン ウ ヴェントリス
設問3 下線部②について正しいものを選べ。
ア 身分にかかわらず同一の刑罰を科した イ 身分によって刑罰が異なった ウ 刑罰を金銭賠償に限った
設問4 下線部③に関連して、アッシリア滅亡後に成立した4王国のうち、世界最古の金属貨幣を用いたとされる国を記せ。
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この設問の型。青山学院大学の全学部日程は60分で大問3題・解答総数45〜50問——1問あたり約1.2分です。まず空所を埋め、次に下線部設問へという順序で処理してください。
設問2は地域で切る。3人とも古代文字の解読者ですが、シャンポリオン=神聖文字(エジプト)、ヴェントリス=線文字B(エーゲ海)、ローリンソン=楔形文字(メソポタミア)。解読者は地域とセットで三人まとめて覚えておけば1秒で決まります。
設問3が最頻出。ハンムラビ法典は「目には目を」で知られますが、刑罰は身分によって異なりました。アの「身分にかかわらず同一」は、この単元で繰り返し出る誤り選択肢です。
設問4は取りこぼしやすい。4王国(エジプト・リディア・新バビロニア・メディア)は名前を挙げられても、それぞれの特徴まで問われると止まります。リディア=金属貨幣、新バビロニア=バビロン捕囚——特徴つきで覚えてください。
青学で古代オリエントが出る形。青学は文化史が必出とされます。この単元では文字と宗教が該当し、まさに設問2・3のような形で問われます。速度勝負なので、知っていれば即答できる状態まで持っていくことが対策になります。
※ 掲載している例題は、各大学の出題形式に合わせて日本世界史塾が作成したオリジナル問題です。実際の入試問題の転載ではありません。実際の過去問は、各大学が公表しているものや市販の過去問集でご確認ください。
例題は解けても、
本番の答案は別ものです。
自分の答案が何点なのかは、自分では判断できません。
体験授業では、実際に書いていただいた答案をその場で添削します。
入塾を前提としたしつこい勧誘は一切行いません。