ヨーロッパ統合とEUとは?石炭と鉄鋼から始めた理由

ヨーロッパ統合とEUとは?石炭と鉄鋼から始めた理由
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ヨーロッパ統合が石炭と鉄鋼の共同管理から始まったのは偶然ではありません。石炭と鉄鋼は、当時の兵器の原料そのものでした。「戦争の材料を共同で管理すれば、互いに戦争を準備できなくなる」——これが出発点です。経済統合という手段で、政治的な目的(独仏の和解)を達成したという構造で読んでください。

なぜ統合だったのか

一言でいうと第二次世界大戦後の西ヨーロッパで進んだ、経済と政治の統合。ECSC → EEC・EURATOM → EC → EUと発展し、共通市場・共通通貨の実現に至った。
  1. 2度の大戦で、ヨーロッパは荒廃し、国際的な地位を失った
  2. 戦後はアメリカとソ連という2つの超大国が世界を主導する構図となった。
  3. 個々の国では米ソに対抗できないという認識が広がった。
  4. とくに独仏の対立が2度の大戦の主因であり、これを解消することが最優先とされた。
  5. マーシャル=プランによる援助が、受け入れ国どうしの協調を促した。
  6. 冷戦下で西側の結束が求められたことも後押しとなった。
統合の3つの動機①独仏の和解(安全保障)②米ソに対抗する経済規模の確保 ③冷戦下での西側の結束「平和のため」だけでは不十分で、この3つを書き分けてください。とくに①が最も本質的です。
独仏の和解が核心普仏戦争・第一次世界大戦・第二次世界大戦——3度戦った両国が、戦争の材料を共同管理することで敵対関係を終わらせました。「対立の構造そのものを作り替えた」という点が、統合の最大の意義です。

発展の段階 — 経済から政治へ

段階 内容
ECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体) 1952 シューマン=プランにもとづき、石炭と鉄鋼を共同管理
EEC(ヨーロッパ経済共同体) 1958 関税同盟と共通市場、共通農業政策
EURATOM(ヨーロッパ原子力共同体) 1958 原子力の共同開発
EC(ヨーロッパ共同体) 1967 上記3つを統合
EU(ヨーロッパ連合) 1993 マーストリヒト条約により成立。通貨・外交・安全保障にも拡大
ユーロ 共通通貨の導入
  1. 原加盟国はフランス・西ドイツ・イタリア・ベネルクス3国の6カ国であった。
  2. イギリスは当初参加せず、対抗してEFTA(ヨーロッパ自由貿易連合)を結成した。
  3. その後イギリスも方針を転換し、ECに加盟した。
  4. 冷戦終結後、東欧諸国が次々に加盟し、加盟国は大きく増えた。
  5. 人・物・資本・サービスの移動の自由が実現した。
  6. しかし財政の統合は不十分で、通貨だけ統一した構造の弱さが後に問題となった。
「なぜイギリスは距離を置いたか」①イギリス連邦との結びつき ②アメリカとの特別な関係 ③主権を委譲することへの慎重さ——この3点です。「イギリスは大陸ヨーロッパとは異なる立ち位置にある」という視点は、名誉革命以来の議会主権の伝統とも結びつけて説明できます。日本世界史塾では、この点を「イギリスの一貫した距離感」として教えています。
統合の順序が重要石炭鉄鋼という限定的な分野から始め、経済全体へ、そして政治へと段階的に広げたのが成功の要因です。「機能的な協力を積み重ねることで、政治的な統合へ進む」という発想でした。最初から政治統合を目指さなかったことがポイントです。
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統合の成果と、直面した課題

成果 課題
独仏の和解と西欧の平和 主権の委譲への抵抗(民主的な正統性の問題)
巨大な単一市場の形成 加盟国間の経済格差
共通通貨ユーロ 財政は各国のまま——通貨だけ統一した構造の弱さ
移動の自由 移民・難民をめぐる摩擦
国際的な発言力の向上 離脱の動き(イギリスのEU離脱)
  1. 共通農業政策は農業を保護したが、財政負担と対外的な摩擦を生んだ。
  2. 通貨統合により為替リスクは消えたが、各国が独自の金融政策をとれなくなった
  3. 経済危機の際、財政の弱い国を支える仕組みが不十分であることが露呈した。
  4. 移動の自由は、労働力の移動と、それにともなう社会的な摩擦を生んだ。
  5. こうした不満が統合に懐疑的な政治勢力の台頭につながった。
「通貨統合の構造的な弱さ」金融政策は統一され、財政政策は各国のまま——この非対称が最大の弱点です。「不況の国が通貨を切り下げて輸出を伸ばす、という調整手段を失った」と書けると、経済に踏み込んだ答案になります。共通テストの資料問題でも問われる論点です。

比較 — 地域統合という現象

枠組み 地域 特徴
EU ヨーロッパ 最も統合が進む。共通通貨と一部の主権の委譲
ASEAN 東南アジア 主権の尊重を重視し、緩やかな協力
NAFTA(のちUSMCA) 北米 自由貿易協定が中心
AU アフリカ OAUを発展させた政治的な連合
APEC アジア太平洋 緩やかな協議の枠組み
  1. いずれも第二次世界大戦後、とくに冷戦後に発展した。
  2. 背景には①経済のグローバル化への対応 ②大国に対抗する規模の確保 ③地域内の紛争の予防がある。
  3. 統合の深さは地域によって異なり、EUが最も深く、ASEANやAPECは緩やかである。
  4. 違いを生むのは歴史的な経験・経済水準の格差・主権への感覚である。
「なぜヨーロッパだけ深く統合できたか」①2度の大戦という強烈な共通体験 ②経済水準が比較的近い ③キリスト教とローマ法という共通の文化的基盤 ④冷戦下で西側として結束する必要があったこの4点で説明できると、地域統合の比較論述は完成します。
戦後の国際秩序の中に位置づける国連(政治)・ブレトン=ウッズ体制(世界経済)・地域統合(地域経済)という3層で戦後秩序を捉えると整理しやすくなります。いずれも「戦間期の失敗の裏返し」として設計されている点は共通です。

入試で狙われるポイント総覧

  • 出発点はシューマン=プランにもとづくECSC(石炭鉄鋼共同体)
  • 石炭と鉄鋼=兵器の原料を共同管理し、戦争を準備できなくする
  • EECEURATOMECマーストリヒト条約EU
  • 原加盟国はフランス・西ドイツ・イタリア・ベネルクス3国
  • イギリスは当初参加せずEFTAを結成、のちに加盟
  • 冷戦終結後に東欧諸国が加盟
  • 共通通貨はユーロ金融は統一・財政は各国という弱点
  • 統合の動機=独仏の和解・米ソへの対抗・西側の結束
共通テストでの出方「ECSCは農産物の共同管理から始まった」は誤り(石炭と鉄鋼)。「イギリスはECSCの原加盟国」も誤り(当初不参加)。「EUの成立はローマ条約による」も誤り(マーストリヒト条約。ローマ条約はEEC・EURATOM)。条約と組織の対応が最頻出です。
この記事の一問一答(確認テスト)
Q1. ヨーロッパ統合の出発点となった提案と、それにもとづく組織を答えよ。
A. シューマン=プラン、ECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体)
Q2. なぜ石炭と鉄鋼から統合を始めたのか。
A. 当時の兵器の原料であり、共同管理すれば互いに戦争を準備できなくなるため
Q3. EUを成立させた条約の名は。
A. マーストリヒト条約
Q4. ECSCの原加盟国6カ国を答えよ。
A. フランス・西ドイツ・イタリア・ベネルクス3国
Q5. イギリスがECに対抗して結成した組織の略称は。
A. EFTA(ヨーロッパ自由貿易連合)
Q6. 通貨統合の構造的な弱点を答えよ。
A. 金融政策は統一されたが財政政策は各国のままであること

よくある質問

なぜ石炭と鉄鋼から始めたのですか?
当時の兵器の原料そのものだったからです。共同管理すれば互いに戦争を準備できなくなります。経済統合という手段で、独仏の和解という政治的目的を達成した構造です。
統合の動機は平和だけですか?
違います。①独仏の和解 ②米ソに対抗する経済規模の確保 ③冷戦下での西側の結束の3つです。とくに①が最も本質的な動機です。
なぜイギリスは当初参加しなかったのですか?
イギリス連邦との結びつき、アメリカとの特別な関係、主権を委譲することへの慎重さが理由です。議会主権の伝統とも結びついた一貫した距離感といえます。
なぜヨーロッパだけ深く統合できたのですか?
2度の大戦という共通体験、経済水準が比較的近いこと、共通の文化的基盤、冷戦下で結束する必要があったことの4点です。ASEANやAPECが緩やかなのはこれらの条件が異なるためです。
この記事について

世界史専門オンライン塾「日本世界史塾」の編集部が、入試での問われ方を基準に作成しています。当塾では次の講師が指導にあたっています。

藤原 進之介日本世界史塾 代表/株式会社数強塾 代表数強塾グループ創業者。東進最年少講師、代々木ゼミナールの日本初となる情報Ⅰ講師を務め、著書は9冊。累計2,500名以上の指導と、40名を超えるプロ講師体制を築いた。
伊藤 敏代々木ゼミナール世界史講師/数強塾グループの映像授業を担当筑波大学・同大学院修士課程修了。ダイヤモンド・オンラインで「カリスマ世界史講師が教える誰も知らない本当の世界史」を連載。「キャラクターがいて、ストーリーがある。それが歴史」を掲げ、通説を多様な視点から捉え直す授業を行う。

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