スターリンと五カ年計画とは?世界恐慌の中で唯一成長した国

スターリンと五カ年計画とは?世界恐慌の中で唯一成長した国
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1930年代、資本主義諸国が世界恐慌で苦しむ中、ソ連だけが高い成長率を記録しました。この事実が「計画経済は有効だ」という印象を世界に与え、各国の経済政策を変えた——ここが五カ年計画の世界史的な意味です。同時にその成長が何を犠牲にして得られたかまで書けなければ、答案としては不十分です。

戦時共産主義からネップへ — 一度後退している

一言でいうとソ連で1928年から実施された計画経済。重工業の建設農業の集団化を柱とし、短期間で工業国へ転換した。指導したのはスターリン
  1. ロシア革命後、内戦と干渉戦争に対応するため戦時共産主義がとられた。穀物の強制徴発と企業の国有化である。
  2. しかし生産意欲が失われ、生産は激減した。
  3. そこでレーニンネップ(新経済政策)に転換し、余剰農産物の販売と小規模な私企業を認めた
  4. 生産は回復し、経済は戦前の水準に近づいた。
  5. レーニンの死後、スターリンとトロツキーが路線をめぐって対立した。
  6. 一国社会主義論(スターリン)世界革命論(トロツキー)を退け、トロツキーは追放された。
  7. 1928年、スターリンのもとで第1次五カ年計画が始まった。
ネップは「後退」ではなく「一時的な譲歩」ネップは資本主義的な要素を部分的に認めた政策です。「社会主義を目指す国が、生産回復のために市場を部分的に復活させた」——この柔軟さと、その後の五カ年計画での再転換をセットで押さえてください。中国の改革開放とも比較できます
一国社会主義論の意味「先進国での革命を待たず、ソ連一国で社会主義を建設できる」という主張です。世界革命を主張したトロツキーとの対立点であり、ソ連が国家として自国の工業化を最優先する路線を決定づけました。

五カ年計画の中身と成果

内容
第1次(1928〜) 重工業の建設を最優先。農業の集団化コルホーズ・ソフホーズ
第2次(1933〜) 重工業を継続しつつ、軽工業にも配慮
成果 短期間で農業国から工業国へ。工業生産が大幅に増加
犠牲 農業の混乱と食糧不足反対派の弾圧、消費財の不足
  1. コルホーズ(集団農場)ソフホーズ(国営農場)により、農民を組織化した。
  2. 集団化に抵抗した富農(クラーク)は弾圧された。
  3. 農業から得た資源を重工業への投資に振り向けた。
  4. 労働者の熟練とノルマの達成が奨励され、生産競争が組織された。
  5. その結果、1930年代に工業生産が大きく伸び、ソ連は主要な工業国となった。
  6. しかし消費財は不足し、生活水準の向上は限定的だった。
「世界恐慌との対比」が最重要1929年からの世界恐慌で資本主義国が大量失業に苦しむ中、ソ連は失業がなく成長を続けているように見えました。この対比が「計画には効果がある」という考えを世界に広め、各国の経済政策に影響を与えました。ニューディールの公共事業や、各国の統制経済もこの文脈にあります「恐慌がなければ、計画経済がここまで注目されることはなかった」——この因果は必ず書いてください。
成果と犠牲は必ず両方書く「工業化に成功した」だけでも、「弾圧が行われた」だけでも不十分です。「短期間の工業化を、農業と国民生活の犠牲の上に達成した」と両面を書くのが正しい答案です。
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外交 — 孤立から集団安全保障へ

  1. 革命直後のソ連は諸国から承認されず孤立していた。コミンテルンを通じた各国共産党への影響も警戒された。
  2. ラパロ条約で、同じく孤立していたドイツと国交を回復した。
  3. 1920年代後半には各国が承認し、1934年には国際連盟に加入した。
  4. ナチスの台頭を受け、ソ連は集団安全保障を掲げ、人民戦線戦術に転換した。
  5. フランスとスペインで人民戦線内閣が成立した。
  6. しかしミュンヘン会談で英仏がドイツに譲歩したことから、ソ連は英仏への不信を強めた。
  7. 1939年、独ソ不可侵条約を結び、世界を驚かせた。
「なぜ独ソ不可侵条約が結ばれたのか」思想的には正反対の両国がなぜ結んだのか——答えは①ソ連は英仏を信用できず、時間を稼ぎたかった ②ドイツは二正面作戦を避けたかった ③秘密議定書で東欧の勢力範囲を分け合った「イデオロギーより当面の国益が優先された」——三十年戦争でのフランスや、七年戦争の外交革命と同じ原理です。この一貫した視点で書けると強い。
人民戦線という転換それまでコミンテルンは社会民主主義勢力も批判の対象としていましたが、ファシズムの脅威を前に、幅広い勢力との協力へ転換しました。「敵の優先順位を変えた」という戦術の転換です。スペイン内戦を論じるときの前提になります。

比較 — 恐慌への3つの答え

対応 特徴
アメリカ ニューディール 政府が需要を作る。TVA・農業調整法・全国産業復興法・ワグナー法
イギリス・フランス ブロック経済 植民地を囲い込み、域外に高関税(スターリング=ブロックなど)
ドイツ・イタリア・日本 ファシズム・対外進出 植民地が乏しく、軍備拡張と対外膨張で活路を求めた
ソ連 五カ年計画 恐慌の影響を受けず成長。計画経済への注目を集めた
  1. いずれも共通して「自由放任では立ち直れない」という認識に立っている。
  2. 違いは「政府がどこまで、どういう形で介入するか」である。
  3. 持てる国(英仏)はブロック経済で内向きに、持たざる国(独伊日)は対外膨張で外向きに解決を求めた。
  4. この持てる国と持たざる国の対立が、第二次世界大戦につながった。
この4分類が現代史の骨格「世界恐慌への対応の違いが、第二次世界大戦の対立構図を作った」——この一文で、1930年代の全体を説明できます。日本世界史塾では、この4分類を1枚のカードにして生徒に持たせています。共通テストの資料問題でも、この枠組みで選択肢を切れます。

入試で狙われるポイント総覧

  • 戦時共産主義(穀物の強制徴発)→ネップ(一部で市場を容認)→五カ年計画
  • スターリンの一国社会主義論トロツキーの世界革命論を退けた
  • 第1次五カ年計画(1928年〜)=重工業の建設農業の集団化
  • 集団農場=コルホーズ、国営農場=ソフホーズ
  • 世界恐慌の影響を受けず成長し、計画経済への注目を集めた
  • 1934年に国際連盟加入人民戦線戦術へ転換
  • 独ソ不可侵条約(1939年)——イデオロギーより国益
  • 恐慌への対応=ニューディール/ブロック経済/ファシズム/五カ年計画の4類型
共通テストでの出方「ネップは戦時共産主義より統制を強めた政策」は誤り(緩めた)。「ソ連は世界恐慌で大きな打撃を受けた」も誤り(影響は限定的)。「コルホーズは国営農場」も誤り(集団農場。国営はソフホーズ)。この3つは定番です。
この記事の一問一答(確認テスト)
Q1. レーニンが戦時共産主義から転換して実施した政策は。
A. ネップ(新経済政策)
Q2. スターリンとトロツキーが対立した2つの路線を答えよ。
A. 一国社会主義論と世界革命論
Q3. 第1次五カ年計画の2つの柱を答えよ。
A. 重工業の建設と農業の集団化
Q4. 集団農場と国営農場の名称をそれぞれ答えよ。
A. コルホーズとソフホーズ
Q5. ソ連が国際連盟に加入した年は。
A. 1934年
Q6. 世界恐慌への対応を4類型で答えよ。
A. ニューディール、ブロック経済、ファシズムと対外進出、五カ年計画

よくある質問

五カ年計画の世界史的な意味は何ですか?
世界恐慌で資本主義国が苦しむ中、ソ連だけが成長したように見えたことです。これが「計画には効果がある」という考えを広め、各国の経済政策に影響を与えました。
ネップはなぜ実施されたのですか?
戦時共産主義で生産意欲が失われ、生産が激減したためです。余剰農産物の販売と小規模な私企業を認めることで生産を回復させました。社会主義国が市場を部分的に復活させた例です。
五カ年計画に問題はなかったのですか?
ありました。農業の集団化により農業が混乱し食糧不足が生じ、抵抗した富農は弾圧され、消費財は不足しました。「工業化の成功」と「その犠牲」は両方書く必要があります。
独ソ不可侵条約はなぜ結ばれたのですか?
ソ連はミュンヘン会談後に英仏を信用できず時間を稼ぎたかったこと、ドイツは二正面作戦を避けたかったこと、秘密議定書で東欧の勢力範囲を分け合ったことが理由です。イデオロギーより国益が優先されました。
この記事について

世界史専門オンライン塾「日本世界史塾」の編集部が、入試での問われ方を基準に作成しています。当塾では次の講師が指導にあたっています。

藤原 進之介日本世界史塾 代表/株式会社数強塾 代表数強塾グループ創業者。東進最年少講師、代々木ゼミナールの日本初となる情報Ⅰ講師を務め、著書は9冊。累計2,500名以上の指導と、40名を超えるプロ講師体制を築いた。
伊藤 敏代々木ゼミナール世界史講師/数強塾グループの映像授業を担当筑波大学・同大学院修士課程修了。ダイヤモンド・オンラインで「カリスマ世界史講師が教える誰も知らない本当の世界史」を連載。「キャラクターがいて、ストーリーがある。それが歴史」を掲げ、通説を多様な視点から捉え直す授業を行う。

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