楔形文字とは?誰がいつ使い、どう解読されたのか

楔形文字とは?誰がいつ使い、どう解読されたのか
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楔形文字は、前3000年ごろシュメール人が生み出した人類最古級の文字体系です。入試では「シュメール人が発明した」だけでなく、誰がどの言語のために借用したのか誰がどの碑文で解読したのかが繰り返し問われます。エジプトの神聖文字との混同を断ち切るところまで、この記事で仕上げます。

楔形文字とは何か(定義と特徴)

一言でいうと前3000年ごろ、メソポタミア南部のシュメール人が生み出した文字体系。粘土板に葦のペンを押しつけて刻むため、線の断面が楔(くさび)形になることからこの名がある。

最初は物の形をかたどった絵文字でしたが、粘土に速く刻むために線が直線化・単純化し、やがて絵の面影を失って抽象的な記号になりました。筆記の道具と材料が文字の形を決めたという点が、この文字の最大の特徴です。

項目 楔形文字 神聖文字(ヒエログリフ)
生んだ民族 シュメール人 エジプト人
書写材料 粘土板 石碑・パピルス
派生 神官文字・民用文字(ヒエラティック/デモティック)はエジプト側 神聖文字→神官文字→民用文字
解読者 ローリンソン シャンポリオン
解読の鍵 ベヒストゥーン碑文 ロゼッタ=ストーン
最頻出の混同「シャンポリオンが楔形文字を解読した」「ロゼッタ=ストーンによって楔形文字が解読された」はいずれも誤り楔形文字=ローリンソン=ベヒストゥーン碑文神聖文字=シャンポリオン=ロゼッタ=ストーンと、3点セットで結びつけて覚えてください。

何のために使われたのか(用途の広がり)

文字が生まれた最初の動機は、文学でも記録の保存でもなく会計でした。神殿に集められた穀物や家畜の量を記録する必要から、数量と品目を表す記号が発達したのです。この点は「文字は国家の管理とともに生まれた」という論述テーマにそのまま使えます。

  • 行政・会計記録 — 神殿や王宮に納められた穀物・家畜・労働力の管理
  • 法典 — ウル=ナンム法典、ハンムラビ法典
  • 文学 — 『ギルガメシュ叙事詩』(洪水伝説を含み、『旧約聖書』のノアの箱舟との類似が指摘される)
  • 外交文書 — アマルナ文書(エジプトと西アジア諸国の往復書簡)
  • 学術 — 天文観測記録、太陰暦、六十進法

アッシリアの首都ニネヴェには、アッシュルバニパル王が集めた大図書館があり、大量の粘土板が発見されました。粘土板は火災で焼けると却って硬化して残るため、パピルスよりも保存性が高く、これが今日メソポタミア史の史料が豊富な理由です。

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多言語に借用された文字 — ここが入試の差がつく点

楔形文字はシュメール語のために作られましたが、その後言語系統の異なる複数の民族が、自分たちの言語を書くために借用しました。文字と言語は別物である、という理解が問われます。

言語 民族・国家 系統
シュメール語 シュメール人 系統不明
アッカド語 アッカド人、バビロニア、アッシリア セム語系
ヒッタイト語 ヒッタイト インド=ヨーロッパ語系
エラム語 エラム 系統不明
古代ペルシア語 アケメネス朝ペルシア インド=ヨーロッパ語系

アッカド語は前2千年紀にオリエントの国際共通語となり、エジプトと西アジア諸国の外交文書(アマルナ文書)も楔形文字のアッカド語で書かれました。のちにアラム語とアラム文字が国際商業語の地位を奪い、楔形文字は次第に使われなくなります。

論述での使いどころ「文字の伝播は、しばしば言語の系統を越えて起こる」——この一般化は、漢字が日本・朝鮮・ベトナムへ伝わった事例や、アラビア文字がペルシア語・トルコ語に用いられた事例と並べて論じられます。文字の広がり=文化圏の広がりという視点で押さえてください。

どのように解読されたのか

解読の鍵となったのが、イランのザグロス山中にあるベヒストゥーン碑文です。アケメネス朝のダレイオス1世が、自らの即位と反乱鎮圧の事績を刻ませたもので、古代ペルシア語・エラム語・アッカド語(バビロニア語)の3言語が併記されていました。

  1. まずドイツのグローテフェントが、王名の繰り返しに注目して古代ペルシア語の楔形文字の一部を推定した。
  2. イギリスのローリンソンが、危険な断崖に登って碑文を写し取り、古代ペルシア語部分を解読。
  3. そこを足がかりに、より複雑なアッカド語部分の解読が進み、メソポタミア史の史料が読めるようになった。

つまり「同じ内容が複数言語で書かれた碑文」が解読の鍵になった点は、ロゼッタ=ストーン(神聖文字・民用文字・ギリシア文字の3種併記)とまったく同じ構造です。混同しやすいのはこの共通点のためですが、碑文の名前と解読者の名前さえ結びつけておけば取り違えません。

なお、ギリシアの線文字Bを解読したのはヴェントリスです。「古代文字の解読者」はセットで問われるため、ここまで一気に固めるのが効率的です。

入試で狙われるポイント総覧

  • 発明した民族 — シュメール人(アッカド人・バビロニア人と入れ替える誤答が定番)
  • 書写材料 — 粘土板(パピルスは誤り)
  • 解読者と碑文 — ローリンソン/ベヒストゥーン碑文
  • 3言語併記 — 古代ペルシア語・エラム語・アッカド語
  • 刻まれた代表的文書 — ハンムラビ法典、『ギルガメシュ叙事詩』
  • 他の解読者 — 神聖文字=シャンポリオン、線文字B=ヴェントリス
覚え方のコツ楔(くさび)→ 粘土 → 押す」「ヒエログリフ → 石とパピルス → 描く」と、動作で区別すると混同しません。文字は道具と材料から生まれる、という因果で覚えるのが最短です。
この記事の一問一答(確認テスト)
Q1. 楔形文字を生み出した民族は。
A. シュメール人
Q2. 楔形文字は主に何に刻まれたか。
A. 粘土板
Q3. 楔形文字を解読したイギリス人と、その手がかりとなった碑文は。
A. ローリンソン、ベヒストゥーン碑文
Q4. ベヒストゥーン碑文に併記された3つの言語を答えよ。
A. 古代ペルシア語・エラム語・アッカド語
Q5. 楔形文字で記された、洪水伝説を含む文学作品は。
A. 『ギルガメシュ叙事詩』
Q6. 線文字Bを解読した人物は。
A. ヴェントリス

よくある質問

楔形文字とヒエログリフはどちらが古いですか?
どちらも前3000年前後に成立しており、明確な先後を断定するのは難しいというのが現在の一般的な説明です。入試では前後関係よりも、民族・書写材料・解読者の組み合わせが問われます。
楔形文字はいつまで使われましたか?
アラム語・アラム文字が国際的な商業語として広がるにつれて衰退し、紀元後1世紀ごろまでには実用の場から姿を消したと考えられています。
ベヒストゥーン碑文は誰が刻ませたのですか?
アケメネス朝ペルシアのダレイオス1世です。自らの即位の正統性と反乱鎮圧の事績を、複数言語で広く示す目的がありました。
古代文字の解読者はまとめて覚えるべきですか?
はい。神聖文字=シャンポリオン/楔形文字=ローリンソン/線文字B=ヴェントリスの3つは、共通テストでも私大でも入れ替え問題として出るため、必ずセットで固めてください。
この記事について

世界史専門オンライン塾「日本世界史塾」の編集部が、入試での問われ方を基準に作成しています。当塾では次の講師が指導にあたっています。

藤原 進之介日本世界史塾 代表/株式会社数強塾 代表数強塾グループ創業者。東進最年少講師、代々木ゼミナールの日本初となる情報Ⅰ講師を務め、著書は9冊。累計2,500名以上の指導と、40名を超えるプロ講師体制を築いた。
伊藤 敏代々木ゼミナール世界史講師/数強塾グループの映像授業を担当筑波大学・同大学院修士課程修了。ダイヤモンド・オンラインで「カリスマ世界史講師が教える誰も知らない本当の世界史」を連載。「キャラクターがいて、ストーリーがある。それが歴史」を掲げ、通説を多様な視点から捉え直す授業を行う。

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