七年戦争とは?ヨーロッパの戦争が世界の勢力図を決めた

七年戦争とは?ヨーロッパの戦争が世界の勢力図を決めた
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七年戦争は「ヨーロッパの戦争であると同時に、北米とインドの覇権を決めた世界規模の戦争」でした。そしてこの戦争の勝者イギリスが、その戦費のせいでアメリカ植民地を失う——勝利が次の敗北の原因になるという、世界史で最も鮮やかな因果の一つです。

背景 — オーストリア継承戦争からの続き

一言でいうと1756〜63年、プロイセン・イギリスオーストリア・フランス・ロシアが戦った戦争。ヨーロッパではシュレジエンの帰属、海外では北米とインドの覇権が争われた。パリ条約でイギリスが植民地帝国としての優位を確立した。
  1. オーストリアで女性のマリア=テレジアが帝位を継ぐことに諸国が異議を唱え、オーストリア継承戦争が起きた。
  2. この戦争でプロイセンのフリードリヒ2世シュレジエンを奪った。豊かな工業地帯である。
  3. マリア=テレジアはシュレジエンを取り返すことを最優先の課題とした。
  4. そのために200年以上敵対してきたフランスと手を結んだ外交革命)。
  5. 孤立を恐れたプロイセンはイギリスと結んだ。
  6. 1756年、こうして敵味方が入れ替わった状態で七年戦争が始まった。
外交革命が問われる理由ハプスブルク家とブルボン家は、イタリア戦争以来の宿敵でした。それが手を結んだ——「宗教でも王朝の伝統でもなく、目先の国益で同盟が組み替えられる時代になった」ことの証明です。三十年戦争でフランスが新教側についたのと同じ原理が、さらに徹底した形で現れています。
イギリスとフランスが逆側にいる理由イギリスとフランスは、この時期ずっと植民地で争っていました第2次英仏百年戦争と呼ばれる)。だからフランスがオーストリアにつけば、イギリスは自動的にプロイセンにつく。ヨーロッパ大陸の同盟関係が、海外の対立によって決まっているのです。

世界規模の戦争 — 3つの戦場

戦場 戦い 結果
ヨーロッパ プロイセン 対 墺・仏・露 プロイセンが辛勝しシュレジエンを確保
北米 フレンチ=インディアン戦争 イギリスがカナダとミシシッピ以東を獲得
インド プラッシーの戦い イギリスがベンガルの実権を握る
  1. プロイセンは3国に囲まれて絶望的だったが、イギリスの資金援助と、ロシアで皇帝が交代して戦線を離脱したことに救われた。
  2. 北米では、イギリスが海軍力でフランスの補給を断ち、ケベックを攻略した。
  3. インドではクライヴ率いるイギリス東インド会社軍がプラッシーの戦いでフランスとベンガル太守の連合軍を破った。
  4. 1763年、ヨーロッパではフベルトゥスブルク条約、英仏間ではパリ条約が結ばれた。
  5. フランスは北米とインドの拠点をほぼ失い、イギリスの覇権が確立した。
プラッシーの戦いの重みこの一戦でイギリスがインド支配へ踏み出しました。以後、東インド会社は徴税権(ディーワーニー)を得て、商業組織から統治機構へ変質します。「一つの戦闘が、200年の植民地支配の起点になった」——インド史の論述では必ずここから書き始めてください。
「イギリスはなぜ勝てたか」①海軍力で植民地への補給を断てた ②財政制度(国債と中央銀行)が整い、戦費を継続的に調達できた ③フランスは大陸の戦争にも兵力を割かねばならなかったフランスは二正面、イギリスは海に集中——この非対称が決め手です。
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勝利が敗北を生む — アメリカ独立への因果

ここが本記事の核心です。イギリスは勝ちすぎたために、13植民地を失いました。

  1. 七年戦争の勝利で、イギリスは巨額の戦債を抱えた。
  2. 「植民地の防衛のために戦ったのだから、植民地も負担すべきだ」として、本国は課税を強化した。
  3. 砂糖法・印紙法・茶法などが次々に課され、植民地は反発した。
  4. 植民地側は「代表なくして課税なし」——本国議会に代表を送っていない以上、課税は不当だと主張した。
  5. この主張の理論的な支柱がロックの思想であった。
  6. ボストン茶会事件を経て対立が決定的になり、アメリカ独立戦争へ至った。
  7. さらにフランスが復讐の機会と見て植民地側で参戦し、イギリスは敗れた。
3段構えの因果①七年戦争の勝利 → ②戦費のための課税 → ③アメリカ独立。しかも④独立戦争を支援したフランスが、今度は自国の財政破綻からフランス革命を迎える戦争の費用が、勝者と敗者の双方の体制を揺るがした——この4段の因果は、東大・一橋の論述でそのまま使えます。
フランス革命への接続フランスがアメリカ独立を支援したのは、七年戦争の報復でした。目的は達したものの、財政は破綻し、三部会の招集からフランス革命が始まります「復讐は果たしたが、王政は倒れた」という皮肉まで書ければ完璧です。

各国にとって何だったか

七年戦争の帰結
イギリス 植民地帝国としての優位が確定。ただし戦債が13植民地喪失の原因に
フランス 北米とインドを失う。報復としてアメリカ独立を支援し、財政破綻
プロイセン シュレジエンを確保し、ヨーロッパの大国として認められる
オーストリア シュレジエン奪回に失敗。ヨーゼフ2世の内政改革へ向かう
ロシア 皇帝の交代で戦線を離脱。以後ポーランド分割で勢力を伸ばす
インド イギリスの植民地化が始まる
「プロイセンが大国になった戦争」オーストリア継承戦争と七年戦争を通じて、プロイセンはオーストリアと並ぶドイツの大国となりましたドイツ統一が「オーストリアを除くか含むか」(小ドイツ主義・大ドイツ主義)で争われる起源は、この二重王国的な状況にあります。ビスマルクの統一を論じるときの前提です。

入試で狙われるポイント総覧

  • 前史=オーストリア継承戦争フリードリヒ2世シュレジエンを奪う
  • 外交革命——オーストリアとフランスが同盟し、プロイセンはイギリスと結ぶ
  • 北米の戦いはフレンチ=インディアン戦争
  • インドの戦いはプラッシーの戦いクライヴ
  • 講和は英仏間がパリ条約(1763年)、独墺間がフベルトゥスブルク条約
  • イギリスはカナダとミシシッピ以東を獲得
  • 戦債 → 植民地への課税 → 「代表なくして課税なし」 → アメリカ独立
  • フランスの独立支援 → 財政破綻 → フランス革命
共通テストでの出方「七年戦争でオーストリアはシュレジエンを回復した」は誤り(失敗)。「外交革命でオーストリアはイギリスと結んだ」も誤り(フランス)。同盟の組み替えを取り違えさせる設問が定番です。日本世界史塾では、この戦争を「勝利が敗北を生む」典型例として近世論述の柱にしています。
この記事の一問一答(確認テスト)
Q1. 七年戦争の前史となった戦争と、プロイセンが奪った地域は。
A. オーストリア継承戦争、シュレジエン
Q2. オーストリアとフランスが同盟したことを何というか。
A. 外交革命
Q3. 七年戦争の北米での戦いを何というか。
A. フレンチ=インディアン戦争
Q4. インドでイギリスがフランスとベンガル太守の連合軍を破った戦いと、その指揮官は。
A. プラッシーの戦い、クライヴ
Q5. 英仏間の講和条約と、イギリスが獲得した北米の領域を答えよ。
A. パリ条約、カナダとミシシッピ以東
Q6. 七年戦争の勝利がアメリカ独立を招いた理由を一言で。
A. 巨額の戦債を賄うため植民地への課税を強化したから

よくある質問

なぜ「世界規模の戦争」なのですか?
ヨーロッパだけでなく、北米(フレンチ=インディアン戦争)とインド(プラッシーの戦い)でも同時に戦われたためです。この戦争の結果、北米とインドの覇権がイギリスに決まりました。
外交革命とは何ですか?
宿敵だったハプスブルク家(オーストリア)とブルボン家(フランス)が同盟したことです。シュレジエン奪回を最優先したマリア=テレジアの判断で、王朝の伝統より目先の国益が優先されました。
イギリスはなぜ勝てたのですか?
海軍力で植民地への補給を断てたこと、国債と中央銀行による財政制度で戦費を調達できたこと、フランスが大陸と海外の二正面だったことの3点です。
勝ったのになぜアメリカを失ったのですか?
巨額の戦債を賄うため植民地に課税したからです。植民地は「代表なくして課税なし」と反発し、独立戦争に至りました。さらに報復として参戦したフランスも財政破綻し、フランス革命を迎えます。
この記事について

世界史専門オンライン塾「日本世界史塾」の編集部が、入試での問われ方を基準に作成しています。当塾では次の講師が指導にあたっています。

藤原 進之介日本世界史塾 代表/株式会社数強塾 代表数強塾グループ創業者。東進最年少講師、代々木ゼミナールの日本初となる情報Ⅰ講師を務め、著書は9冊。累計2,500名以上の指導と、40名を超えるプロ講師体制を築いた。
伊藤 敏代々木ゼミナール世界史講師/数強塾グループの映像授業を担当筑波大学・同大学院修士課程修了。ダイヤモンド・オンラインで「カリスマ世界史講師が教える誰も知らない本当の世界史」を連載。「キャラクターがいて、ストーリーがある。それが歴史」を掲げ、通説を多様な視点から捉え直す授業を行う。

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