ヨーロッパ近世史の完全まとめ|流れ・重要用語・入試頻出ポイント総覧

近世ヨーロッパ(15〜18世紀)は、ルネサンス・大航海時代・宗教改革・主権国家体制・絶対王政という5つの大事件が同時進行する、世界史で最も密度の高い時代です。バラバラに見えますが、実は「中世の統一(カトリック教会)が壊れ、国家という新しい単位が立ち上がる」という一本の流れです。
近世ヨーロッパの全体像を3分でつかむ
| できごと | 何を壊したか | 何を生んだか |
|---|---|---|
| ルネサンス | 教会中心の世界観 | 人間中心の文化、科学的精神 |
| 大航海時代 | 地中海中心の世界像 | 世界の一体化、商業革命、価格革命 |
| 宗教改革 | カトリック教会の統一 | 宗派の分立、国家が教会を支配 |
| 主権国家体制 | 教皇と皇帝の普遍的権威 | 対等な国家の並存(ウェストファリア条約) |
| 絶対王政 | 封建諸侯の自立 | 常備軍・官僚制、中央集権 |
つまり近世とは「壊れた中世の秩序の跡地に、国家が建った時代」です。この視点で読むと、5つの事件が別々の話ではなく、同じ変化の別の側面だと見えてきます。
ルネサンスと大航海時代
ルネサンス — なぜイタリアから始まったのか
北イタリア諸都市が東方貿易で富を蓄え、メディチ家のような大商人がパトロンとなったこと、そしてビザンツ帝国の滅亡で古典の学者が亡命してきたことが重なりました。富と古典と自由な都市の3条件です。
- 文学=ダンテ『神曲』、ボッカチオ『デカメロン』、マキァヴェリ『君主論』(政治を宗教・道徳から切り離した)
- 美術=レオナルド=ダ=ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ
- 北方=エラスムス『愚神礼賛』(教会批判)、トマス=モア『ユートピア』
- 三大発明=火薬・羅針盤・活版印刷(中国起源、改良されて普及)
大航海時代 — 世界が一つにつながる
動機は①香辛料の直接入手(オスマン帝国とイタリア商人の中間搾取を避ける)②キリスト教の布教 ③金銀の獲得。技術的前提として羅針盤と造船技術、そしてレコンキスタの完了(1492年、グラナダ陥落)がありました。
| 人物 | 国 | 業績 |
|---|---|---|
| バルトロメウ=ディアス | ポルトガル | 喜望峰に到達 |
| ヴァスコ=ダ=ガマ | ポルトガル | インド航路の開拓(カリカット到達、1498) |
| コロンブス | スペイン | 1492年、西インド諸島に到達 |
| マゼラン | スペイン | 一行が世界周航を達成 |
| コルテス/ピサロ | スペイン | アステカ帝国/インカ帝国を滅ぼす |
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宗教改革 — 教会の統一が壊れる
- 1517年、ルターが『九十五カ条の論題』を発表し、贖宥状(免罪符)の販売を批判。「人は信仰によってのみ救われる」「聖書のみが信仰の基準」と主張した。
- 活版印刷によって主張が急速に広まり、ドイツ語訳聖書が民衆に読まれた。
- 諸侯が支持した理由は信仰だけではない。教会領の没収と皇帝からの自立という利害があった。
- アウクスブルクの和議(1555年)で領主が宗派を選ぶ権利が認められた(個人の信仰の自由ではない点に注意)。
- カルヴァンはスイスで改革を行い、予定説を説いた。職業労働を神の召命とする倫理が商工業者に支持され、オランダ・イギリス・フランスへ広がった。
- イギリス国教会はヘンリ8世の離婚問題を機に成立(首長法)、エリザベス1世の統一法で確立した。
- カトリック側はトリエント公会議とイエズス会(ザビエルら)で対抗した(対抗宗教改革)。
宗教対立は戦争を生みました。ドイツの三十年戦争(1618〜48)、フランスのユグノー戦争(ナントの王令で終結)、オランダ独立戦争などです。とくに三十年戦争は最後の宗教戦争であり最初の国際戦争と呼ばれます。
主権国家体制と絶対王政
三十年戦争を終結させたウェストファリア条約(1648年)は、世界史の分水嶺です。
- カルヴァン派が公認され、アウクスブルクの和議が拡大された
- スイスとオランダの独立が国際的に承認された
- ドイツの諸領邦にほぼ主権が認められ、神聖ローマ帝国は有名無実化(「帝国の死亡診断書」)
- 対等な主権国家が並存し、条約によって関係を調整するという国際秩序が成立した
この体制の中で、各国は競争に勝つため国内の統合を進めます。それが絶対王政です。支えたのは常備軍・官僚制・重商主義の3点セットで、思想的には王権神授説が用いられました。
| 国 | 君主 | 特徴 |
|---|---|---|
| スペイン | フェリペ2世 | 「太陽の沈まぬ国」。無敵艦隊の敗北後に衰退 |
| フランス | ルイ14世 | 「朕は国家なり」。コルベールの重商主義、ヴェルサイユ宮殿、ナントの王令廃止 |
| イギリス | エリザベス1世 | 毛織物と海外進出。のちピューリタン革命・名誉権命で王権が制限される |
| プロイセン | フリードリヒ2世 | 啓蒙専制君主。「君主は国家第一の僕」。七年戦争でシュレジエンを確保 |
| ロシア | ピョートル1世 | 西欧化、北方戦争、ペテルブルク建設 |
| オーストリア | マリア=テレジア | オーストリア継承戦争、外交革命でフランスと結ぶ |
入試で狙われるポイント総覧
- 1492年=コロンブス到達+グラナダ陥落(レコンキスタ完了)
- 商業革命=貿易の中心が大西洋へ/価格革命=銀の流入で物価高騰
- 1517年=ルターの九十五カ条の論題
- アウクスブルクの和議(1555)は領主に宗派選択権(個人の信仰の自由ではない)
- カルヴァン=予定説、商工業者に支持される
- ウェストファリア条約(1648)=主権国家体制の成立
- 絶対王政の3点セット=常備軍・官僚制・重商主義
- イギリスのみ議会が王権を制限(権利の章典、1689)
- Q1. 1498年にインド航路を開拓した人物は。
- A. ヴァスコ=ダ=ガマ
- Q2. 貿易の中心が地中海から大西洋へ移ったことを何というか。
- A. 商業革命
- Q3. ルターが1517年に発表した文書は。
- A. 『九十五カ条の論題』
- Q4. アウクスブルクの和議で認められたのは誰の宗派選択権か。
- A. 領主(諸侯)
- Q5. 三十年戦争を終結させた条約と年は。
- A. ウェストファリア条約、1648年
- Q6. 絶対王政を支えた3つの要素を答えよ。
- A. 常備軍・官僚制・重商主義
よくある質問
- 近世ヨーロッパはどこから覚えればいいですか?
- 「中世の統一が壊れ、主権国家が生まれる」という一本の流れに、ルネサンス・大航海・宗教改革・絶対王政を配置してください。個別に覚えるより定着します。
- 宗教改革はなぜ諸侯に支持されたのですか?
- 信仰上の共感に加え、教会領を没収できるという経済的利益と、皇帝や教皇から自立できるという政治的利益があったためです。
- 価格革命と商業革命の違いは?
- 価格革命はアメリカ大陸の銀の流入による物価高騰、商業革命は貿易の中心が地中海から大西洋沿岸へ移ったことです。価格革命は固定地代に頼る領主層を没落させました。
- なぜイギリスだけ絶対王政が続かなかったのですか?
- 中世以来の議会の伝統があり、ジェントリという地方有力層が議会を支え、宗教対立が王権への抵抗と結びついたためです。ピューリタン革命と名誉革命を経て、議会が王権を制限しました。
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