ニューディールとは?政府が経済に介入するという転換

ニューディールとは?政府が経済に介入するという転換
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ニューディールの世界史的な意味は「失業を減らした」ことではありません。本質は「自由放任という原則を捨て、政府が経済に責任を負うという考え方が定着した」こと。アダム=スミス以来150年続いた前提が覆ったのです。しかも景気を最終的に回復させたのは戦争だった——この留保まで書けるかが分かれ目です。

世界恐慌 — なぜ連鎖したのか

一言でいうと世界恐慌に対し、アメリカのフランクリン=ローズヴェルト大統領が実施した一連の政策。政府が積極的に経済へ介入し、雇用の創出と産業・農業の統制を行った。
  1. 第一次世界大戦後、アメリカは債務国から債権国へ転じ、世界経済の中心となった。
  2. 1920年代は自動車・電気製品を中心に空前の繁栄を享受した。
  3. しかし農業の不振生産過剰が進み、株式市場は投機で膨張していた。
  4. 1929年10月、ニューヨーク株式市場で株価が暴落した。
  5. 銀行の破綻と企業の倒産が連鎖し、失業者が激増した。
  6. アメリカが資本を引き揚げたため、ドイツの復興が止まり、恐慌はヨーロッパへ波及した。
  7. 各国が関税を引き上げたため、世界貿易が縮小し、恐慌は深刻化した。
「連鎖の経路」を書くアメリカの資本がドーズ案でドイツへ流れ、ドイツが賠償を英仏へ払い、英仏が戦債をアメリカへ返す——この循環が成り立っていました。「アメリカが資本を引き揚げた瞬間、循環全体が止まった」恐慌が世界化した理由を、この資金の循環で説明できる受験生は多くありません。ここが差のつくポイントです。
関税引き上げが事態を悪化させた各国が自国産業を守るため関税を上げた結果、世界貿易が縮小し、全員が損をしました。この反省から、戦後にGATTが作られます。「保護は個々には合理的でも、全体では破滅的になりうる」——現代にも通じる論点です。

ニューディールの中身

政策 内容
緊急銀行法 銀行を一時閉鎖し、健全な銀行のみ営業を再開させて信用を回復
農業調整法(AAA) 生産を制限して農産物価格を引き上げ、農民の所得を回復
全国産業復興法(NIRA) 産業ごとに生産量・価格・労働条件を協定させる
TVA(テネシー川流域開発公社) 大規模な公共事業でダムを建設し、雇用を創出
ワグナー法 労働者の団結権・団体交渉権を保障
社会保障法 年金と失業保険の制度を創設
  1. まず金融の信用回復から着手した。銀行が信用されなければ、他の政策は機能しないためである。
  2. 次に価格の下落を止めるため、農業と工業の生産を統制した。
  3. 同時に公共事業で直接に雇用を作った。
  4. さらに労働者の購買力を高めるため、団結権を保障し賃金を支えた。
  5. 金本位制を停止し、通貨の管理を強めた。
  6. これらは「政府が有効需要を作り出す」という考え方に沿っていた。
「なぜ労働者の権利を保障したのか」人道的な理由だけではありません。労働者の賃金が上がれば購買力が増し、商品が売れて生産が回復する——つまり経済政策としての労働政策でした。「ワグナー法は労働政策であると同時に景気対策だった」と書けると、答案の水準が明確に上がります。
違憲判決を受けたものがある農業調整法と全国産業復興法は、連邦最高裁により違憲とされました(政府の権限を越えるとの判断)。「大統領と最高裁の対立」という論点があり、三権分立が実際に機能した例としても問われます。
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何が変わったのか — 思想の転換

ニューディール以前 以後
経済思想 自由放任(レッセ=フェール) 政府が有効需要を作る
政府の役割 夜警国家(治安と国防のみ) 福祉国家(雇用と生活に責任)
労働者 契約は個人の自由 団結権を法で保障
理論的支柱 アダム=スミス以来の古典派 ケインズの考え方に近い
  1. 「市場に任せれば均衡する」という前提が、大量失業の現実の前に崩れた。
  2. 政府が需要を作り、雇用を支えるという発想が定着した。
  3. この考え方は戦後、西欧の福祉国家として制度化された。
  4. しかし1970年代の石油危機とスタグフレーションで、この路線は行き詰まる。
  5. 以後、サッチャー・レーガンによる「小さな政府」への揺り戻しが起きた。
「振り子」で理解する自由放任 →(恐慌)→ 大きな政府 →(石油危機)→ 小さな政府20世紀の経済政策は、危機のたびに振り子のように振れています「危機の性質が、次の政策を決めた」という枠組みで書くと、現代史の経済分野が一本になります。日本世界史塾では、これを「経済政策の振り子」として教えています。
「ニューディールで恐慌は終わったのか」失業は大きく減りましたが、完全な回復は第二次世界大戦の軍需によるとされます。答案では「ニューディールは恐慌を緩和したが、最終的な回復は戦時経済によった」という留保を入れてください。この一文があるだけで評価が変わります。

外交と、他国との対比

  1. ローズヴェルトはラテンアメリカに対し善隣外交をとり、キューバの独立を実質的に承認するなど関係の改善を図った。
  2. ソ連を承認し、国交を樹立した。
  3. フィリピンの独立を約束した。
  4. これらは市場を確保し、対立を減らすという経済的な動機とも結びついていた。
  5. 一方、ヨーロッパ情勢に対しては中立法を定め、当初は不介入の姿勢をとった。
恐慌への対応 評価
アメリカ ニューディール 政府の介入により民主政を維持したまま危機に対応
イギリス・フランス ブロック経済 植民地で囲い込む。持てる国の解決策
ドイツ・イタリア・日本 対外進出 持たざる国が軍事的な解決を選ぶ
ソ連 五カ年計画 恐慌の影響を受けず成長
最大の対比「同じ恐慌に直面しながら、アメリカは民主政を保ったまま国家の介入で対応し、ドイツは民主政を捨てて独裁と対外進出を選んだ」——この対比が、1930年代を論じる際の核心です。なぜ違いが生じたのかを、植民地の有無・議会制の成熟度・敗戦国としての不満から説明してください。

入試で狙われるポイント総覧

  • 恐慌の始まり=1929年のニューヨーク株式市場の暴落
  • 世界化の経路=アメリカの資本引き揚げ関税引き上げ
  • 実施者はフランクリン=ローズヴェルト
  • 主要政策=緊急銀行法・農業調整法(AAA)・全国産業復興法(NIRA)・TVA・ワグナー法・社会保障法
  • AAAとNIRAは違憲判決を受けた
  • 金本位制の停止
  • 思想の転換=自由放任から、政府による有効需要の創出へ
  • 外交=善隣外交・ソ連承認・フィリピン独立の約束・中立法
  • 完全な回復は第二次世界大戦の軍需による
共通テストでの出方「ニューディールにより恐慌は完全に克服された」は不正確。「農業調整法は生産を拡大させる政策」も誤り(生産を制限して価格を上げた)。「ワグナー法は労働者の団結を禁止した」も誤り(保障した)。政策の中身の反転が定番の引っかけです。
この記事の一問一答(確認テスト)
Q1. 世界恐慌の発端となった出来事と年を答えよ。
A. ニューヨーク株式市場の株価暴落、1929年
Q2. ニューディールを実施した大統領は。
A. フランクリン=ローズヴェルト
Q3. 農業調整法の内容を一言で答えよ。
A. 生産を制限して農産物価格を引き上げた
Q4. 大規模な公共事業として設立された機関の略称は。
A. TVA(テネシー川流域開発公社)
Q5. 労働者の団結権・団体交渉権を保障した法律は。
A. ワグナー法
Q6. ニューディールがもたらした経済思想上の転換を答えよ。
A. 自由放任から、政府が有効需要を作り出すという考え方へ

よくある質問

ニューディールの世界史的な意味は何ですか?
自由放任という原則を捨て、政府が経済に責任を負うという考え方が定着したことです。アダム=スミス以来の前提が覆り、戦後の福祉国家へつながりました。
なぜ恐慌が世界に広がったのですか?
アメリカの資本がドイツへ流れ、ドイツが賠償を英仏へ払い、英仏が戦債をアメリカへ返すという循環が成り立っていたためです。アメリカが資本を引き揚げた瞬間、この循環全体が止まりました。
ニューディールで恐慌は終わったのですか?
失業は大きく減りましたが、完全な回復は第二次世界大戦の軍需によるとされます。答案ではこの留保を必ず入れてください。
なぜアメリカとドイツで対応が分かれたのですか?
植民地の有無、議会制の成熟度、敗戦国としての不満が異なったためです。アメリカは民主政を保ったまま国家の介入で対応し、ドイツは民主政を捨てて独裁と対外進出を選びました。
この記事について

世界史専門オンライン塾「日本世界史塾」の編集部が、入試での問われ方を基準に作成しています。当塾では次の講師が指導にあたっています。

藤原 進之介日本世界史塾 代表/株式会社数強塾 代表数強塾グループ創業者。東進最年少講師、代々木ゼミナールの日本初となる情報Ⅰ講師を務め、著書は9冊。累計2,500名以上の指導と、40名を超えるプロ講師体制を築いた。
伊藤 敏代々木ゼミナール世界史講師/数強塾グループの映像授業を担当筑波大学・同大学院修士課程修了。ダイヤモンド・オンラインで「カリスマ世界史講師が教える誰も知らない本当の世界史」を連載。「キャラクターがいて、ストーリーがある。それが歴史」を掲げ、通説を多様な視点から捉え直す授業を行う。

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